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すぐに実践できる抽象化のトレーニング方法を紹介!メリットも合わせて解説 

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すぐに実践できる抽象化のトレーニング方法を紹介!

抽象化と言うとなんだか難しく感じるかもしれません。
確かに最近では外資系コンサルティング会社や投資会社の採用試験でよく出題されますので、難易度は高めと感じるかもしれません。

しかし考え方は極々単純で難しいものではありません。正しく理解しトレーニングを積めば必ず身に付く能力です。
なぜなら抽象化思考は人間にはもともと備わっている能力だからです。

抽象化と言う考え方自体は最近のものではありません。
人はどのようにして物を認識するかなど、哲学の世界では複雑なものを読み解くために古くから使われてきました。 先程述べましたように、現在では外資系コンサルティング会社や投資会社の入社試験などで、この抽象的思考を試す試験が出題され重視されるようになっています。

ではなぜ重視されるようになったのでしょうか?

現代は以前に比べて情報量が多く複雑化しているため、近視眼的になりがちです。様々な問題を解決して経営課題を達成するためには、斬新なアイディアや幅広い視野が欠かせません。
そのために、哲学で複雑な事柄を解決する手段として使われていた抽象化思考が必要とされているのです。歴史的な手法で使い方も確立しているため、正しく学べば怖くありません。
言い換えれば、現代社会はようやく、哲学が中世に問題解決のために挑んで確立した手法が、必要となって来たともいえるでしょう。

詳しくは記事内で解説しますが、抽象化してものごとを捉えられることで、思考のスピード・質が高まり、問題解決能力向上に役立てることが出来ます。

本記事では、上記のような抽象化の力を生かして頂くために抽象化の基礎知識やそのメリット、加えてトレーニング方法についてまとめました。

【この記事はこんな方におすすめです】

抽象化と具体化の違いとは?

抽象化と具体化の違いとは

まずは、抽象化に関する基礎知識について解説していきます。

抽象化とは?

抽象化とは、対象となるものに共通する部分だけを抽出することを指します。
例えば「赤い6人乗りのワンボックスカー」「飛行機」「N700系新幹線」これらを抽象化してみましょう。共通する部分を抽出するのですから、共通するものなら何でもいいです。

例えば「移動手段」と言うのがまずは思い浮かぶのではないでしょうか?
このように、具体的な物から大きな括りにしていくのが抽象化です。抽象化して行くと分かりにくくなりますが、色々な解釈が出来発想の幅が広がります。

ではここに「鉛筆」「ピアノ」を加えたらどのように抽象化できるでしょうか? 少し複雑になってくると思います。こんどは「移動手段」ではありませんので、5つのものに共通する事柄を探す必要があります。

例えば「製品」なんてどうでしょうか?これならば5つともすべてに共通する要素です。 複雑に考えていた人は、そんなの当たり前ではないか、と言う感想を持たれたかもしれません。
しかしこれが抽象化では重要な事なのです。とにかく共通のものを抽出する必要があります。

ではもう一つ、今度は「鉛筆」「ピアノ」の代わりに「雲」「鳥」「月」を加えてみます。これを抽象化してみましょう。少し難しいかもしれません。 これは「動くモノ」と抽象化できるでしょう。今までは人が作ったものでしたが、今度は自然物が入ってきましたから、また違う共通のものを探す必要があります。

これが抽象化と言う作業になります。これが何の役に立つのかについてはメリットの所で紹介したいと思います。

具体化とは

具体化はよく聞く言葉ではないでしょうか。こちらの方はイメージがしやすいと思います。

先程の赤いワンボックスカーの例で考えてみましょう。ワンボックスカーは製品と抽象化しました。しかし“製品”では具体的に何の製品が分かりません。
例えば自動車と言えばより具体的になり、イメージしやすくなります。

しかし自動車でもまだ抽象的です。ここでも”自動車”と言うことは共通していますが、乗用車なのかトラックなのか分かりません。
ここで6人乗りの赤いワンボックスカーと言えばかなり具体的にイメージ出来、何に使うのかも想像できるのではないでしょうか。

動くモノも具体化してみましょう。動くモノですから飛行機や電車、発想を飛ばして海の波、鳥や豹、地球も動きます。
この様に具体化とはイメージのし易くするまでかみ砕き、解釈の余地が少ないものにすることを言います。

抽象化トレーニングで得られるメリットとは?

先程の「動くモノ」と抽象化したものがどのようなメリットがあるのか紹介したいと思います。
あそこでは「雲」「鳥」「月」と他の製品とは何ら関係が無さそうですが、実は実際に鳥は、飛行機や新幹線の騒音の改善など技術向上に非常に役立っています。

よく見ると新幹線の長い先端や、飛行機の羽の形なども鳥に似ているように見えます。

ものごとの本質を素早く見抜ける様になる

抽象化のトレーニングを積むことで得られるメリットの代表例とも言えるのが、ものごとの本質を素早く見抜けるようになる事です。

ここでも先ほどの赤いワンボックスカーを例にしてみます。
経営課題としてこのワンボックスカー(赤にこだわらない)で利益を○○億円達成するとします。
そうなると色々と問題が発生します。
まず1台当たりの利益を考え、そのための売価と原価、販管費、販売台数を考える必要があります。
しかし具体的ですが、かなり近視眼的になってしまっていることが分かります。ここで抽象化して行きましょう。そもそも○○億円を達成するにはどうしたらいいのかです。

売価や原価、販売台数だけを考えていては他社との競争になり利益を押し下げます。それよりも、どのような車にして誰がどういった時に利用するのかを考えなければなりません。さらに本当にイメージしているワンボックスカーでいいのか考える必要もあるかもしれません。
この様に抽象化思考が出来る人は近視眼的にならず、利益を上げるための本質的な部分に切り込み、具体化と抽象化を通して考えを進めて行く事が出来ます。

具体化と抽象化の応用で問題解決力が上達

社会人にとって、日ごろの業務は問題解決の連続です。私たちはそれらに向き合って適切に解決して行かなければなりません。
これらの問題を適切に解決に抽象化思考は大変役に立ちます。そのため抽象化思考のトレーニングを積むことは多くのメリットがあります。
なぜなら、抽象化の訓練を実践している人は、抽象化と具体化を繰り返えし、問題解決を素早く出来るからです。

例えば、先ほどのワンボックスカーに顧客から「商品が高すぎる」というクレームがあったとします。
具体的な考え方しか持ち合わせていない人は、原価を安くして販売価格を下げる、値引き率を高くする必要があると社内にフィードバックするでしょう。
しかし抽象的思考が出来る人は「値段が高く感じた」と捉えるため、何故高いと感じたのかと考えます。そのように考えると「高級感が無い」「利便性が悪い」「他社に比べて高い」など高く感じる要因を考えます。

高級感が無いと思うならば、パンフレットや展示の仕方を変えるだけでも違うかもしれません。利便性が悪いと感じているようであれば、利便性の良いところをアピールするのもいいでしょうし、改良の余地があるのであれば製造部にフィードバックします。
また、他社に比べて高いと言われたならば、燃費の良さや、車両が軽いためタイヤが長持ちする等を説明して、トータルコストが安いことをセールストークに入れる事を提案するかもしれません。

この様に抽象的思考が出来る人は様々な可能性を考えることが出来、シミュレーションも出来るため解決までのスピードが速くなります。

コミュニケーションスキルが高まる

社会生活を送るうえでコミュニケーションは欠かすことが出来ません。そして考え方や行動は人により様々であり、意見が衝突する事もあります

もちろんいくら抽象化思考があってもすべてのコミュニケーションがうまくいくとは限りません。例えば一人は赤い車がいいと、もう一人は白がいいと意見が対立した場合の解決策はどちらかが妥協するしかありません。

しかし問題が複雑である場合は、問題を単純化させて意見を対立させることもありがちですが、このような場合には抽象化思考によって妥協点を見いだすことが出来る可能性があります。
先程のワンボックスカーで言えば、営業部は原価を下げて売価を安くすることを要求するでしょうし、製造部は安全性や品質を担保するためにむしろ原価を上げたいと主張するでしょう。

しかし先ほどのように抽象化が出来る人は「安全性は絶対」だと言うこと以外は利益を確保するために柔軟に考えます。
例えばパンフレットの刷新であれば営業部も製造部も受け入れやすいでしょうし、パンフレットのデザインや、車の見栄えのための細かな変更などであれば製造部も受け入れやすいでしょう。

この様に抽象化思考を持っていれば、根本的な対立は残ったとしても、双方のコミュニケーションを促進して解決案とは言えなくても、妥協案で前に進めていくことが出来ます。

抽象化を鍛えるトレーニング方法

最後に、抽象化する力のトレーニング方法について紹介していきましょう。

「アナロジー」を用いたトレーニングで抽象化する能力が大幅アップ

「アナロジー」とは辞書では類推と書かれていることも多いですが、抽象化思考ではより哲学的な意味で使用するため「アナロジー」と言う言葉を使います。
抽象化思考で意味する「アナロジー」は抽象化したアイディアを構造化する事と、その構造を当てはめてアイディアを得ることを意味します。

これでは何を言っているのか分からないので、具体例を挙げて行きます。先ほど動くモノと言う抽象化で「N700系新幹線」と「鳥」を例に挙げて話したいと思います。

新幹線で問題となるのは安全性や速度、騒音などです。
ここで参考になるのは鳥の中でも、狩りをする鳥になります。高速で静かに近づくことが重要だからです。
これが「構造化」です。構造化では「目的」を明確にし、「原因と結果」から「解決方法」を探して行きます。ここでは目標を、騒音を抑え高速化することに置きます。

では「原因と結果」から考えて行きましょう。鳥が静かに高速に飛行できる原因を考えます。そうすると羽根の形状や、くちばしなどが理にかなっていることが分かります。
詳しい話は省きますが、その原理により騒音を低下させ、空気抵抗を減らすことで高速化を実現しています。
生活の中で問題を抱えた時や悩みがあるときに、他のものを参考に「目的」を明確にし、「原因と結果」から「解決方法」を意識して行くと、抽象化思考の訓練にもなります。

最初はなかなか難しいと思いますが、上手く行っているもの、歴史的に確立されているものを参考にするのがコツになります。
先程の新幹線の例であれば、新幹線は100年の歴史もないものです。それが数万年と進化を繰り返した鳥の原理に追いつくはずもありません。まだまだ参考になるものは、多くあるでしょう。
「アナロジー」の訓練は、最初のうちは難しく感じると思います。まずは身近なものから、そういった例を探してみるのがいいでしょう。

慣れてきたら、自分の悩みや問題に応用して、仕事にも生かして行きましょう!

読書は抽象化力を高められる「トレーニングジム」

抽象的な本を読むのも抽象化思考のトレーニングになります。「アナロジー」のトレーニングよりは、具体的なためイメージはしやすいと思います。
楽しんで身に付ける方法としてなぞかけと言うのもあります。ねづっちさんがやっている「整いました! ~とかけて~と解く、その心はどちらも~でしょう」と言うものです。
これも抽象化して共通のものを抽出する作業をしています。

例えば「料理をするとかけて、寒い日に出かけると解きます、その心はどちらも「きる」でしょう」ここでは料理を一回具体化して、その中の「切る」と言うのを抽象化しています。
「きる」と言う抽象化されたものを具体化すると「切る」「着る」とどちらにもなる訳です。

また、現在は抽象化トレーニングと言うような本もたくさん出ていますので、それらの本を参考に読んでみるのもいいでしょう。

本格的に抽象的思考を付けたいと思うのであれば、究極的には哲学書がもっとも抽象的な本です。哲学書は万物の真理を定式化したものです。
しかし、哲学書は敷居が高いのも事実です。興味がある場合は紐解いて見るものいいと思いますが「抽象化思考を付けるために」と安易に読むと時間の浪費になる可能性もあります。

哲学書まで行かなくても学術書に近いものを読むことで、抽象的思考が身に付きます。経営の実用書等は具体的な手法が書かれていますので抽象化思考を付けるのには向きません。
その反面、経済学書は抽象的と言えるでしょう。例えばニュースなどでも聞く「GDP」や「消費が低迷して景気が悪い」等は経済学の概念です。
言葉自体はよく耳にするのでなんとなくは知っているけど、具体的にどう言う事と言われると中々説明できないのではないでしょうか?

こういった本を、抽象化思考を意識して読むと抽象化思考が分かってきます。

分りやすい説明も抽象化のトレーニングに最適

物事を相手に合わせて分かりやすく説明する事も、抽象化のトレーニングには最適です。
これは、相手の知識や能力に合わせて、どのように説明すれば理解してもらえるのかを抽象化と具体化を繰り返す作業で実現して行きます。

例えば織田信長に「新幹線」を説明するのであれば、岸田総理に説明するのとはわけが違います。
まず織田信長を戦国時代の人と抽象化します。そして戦国時代の環境や技術、知識等、具体的な事を知る必要があります。

その上で織田信長にも分かるように、形は巨大な蛇のようで、荷車のように下に車輪があり、大阪と江戸を飛ぶように2時間で人でも馬でもなく自動で動く物と説明する必要があります。
しかし岸田総理に説明するのに大蛇のようでとは説明しないでしょう。最新式では、さらに安全で高速、快適になり、コストも安く海外と比べても競争力があります。と説明するでしょう。
要するに、物事を抽象化しておく事により相手がどのような状況でも、それに合わせて説明が出来ると言うことです。

このように相手の状況に合わせて説明する事で、抽象化思考は高めることが出来ます。相手に説明すると言うのは、理解を深める事にもなりますので、機会があれば是非チャレンジしてください。

まとめ

抽象化とは、物事の本質的な部分を抽出する作業のことを指します。
この抽象化の力を鍛えることで、問題への対応力が高められる。課題を達成するための斬新なアイディアが出せるなどビジネス上の様々なメリットが得られます。

また、ビジネス以外のシーンでも役立つ、コミュニケーション能力についても向上が期待できますから、しっかりとした手順で学べば非常に実用性のあるスキルとなります。

本記事では、抽象化思考を付けるためのトレーニングについて、メリットとセットで紹介しました。
あなたも、ぜひ実践してビジネスやプライベートに大いに生かしてください。

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