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フェルミ推定のやり方とコツ!注意点も解説

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フェルミ推定のやり方とコツ!注意点も解説

未知の情報やデータがあるとき、あなたはどのようにしてそれに対処しますか?
それがビジネスの意思決定や日常生活に関わる場合、的確な判断が求められます。 そこで登場するのが「フェルミ推定」。
フェルミ推定は、具体的なデータがなくても、「ざっくりとした」答えを見つけるための方法です。

本記事では、フェルミ推定の基本から活用法までを解説し、問題解決能力を向上させる手助けになります。 未知の情報に立ち向かい、的確な答えに近づくための力を身につけましょう。

フェルミ推定とは

フェルミ推定は、一言でいうと「わからないもの」を概算する力です。
具体的なデータや情報が手元にない場合でも、論理的思考と知識に基づいて答えを推測する手法のことをいいます。

例えば、人口や物の数など正確な情報を持っていない場合においても、フェルミ推定を使えば類推することができます。
具体的な数値がなくても、おおまかな方針を立てる手助けとなります。特に、限られた情報で的確な判断を下す能力は、プレゼンテーションや交渉など、ビジネスシーンにおいて非常に役立つことでしょう。

フェルミ推定を学ぶことで、論理的思考力の向上や問題解決能力の強化にもつながります。また、数字やデータを通じて物事を客観的に考える力が養われるため、より効果的な意思決定が可能です。

フェルミ推定で必要な力

フェルミ推定を使うには、最低限の前提知識と論理的な思考力、計算力が必要です。前提知識は、問題の背景や関連する基本的な情報を理解する基盤となります。
論理的な思考力は、与えられた情報をもとに、合理的な仮定や推論する能力に繋がります。そして、計算力は数値を使った近似や計算するスキルを指します。
これらの力が備わることで、フェルミ推定を通じて問題を的確に解決し、現実的な答えに近づくことが可能です。

フェルミ推定の目的

フェルミ推定を使う目的は、おもに二つあります。

問題解決の補助:フェルミ推定は、具体的な数値がない状況や情報不足の場合に、おおまかな答えを見つけるのに役立ちます。
ビジネスや日常生活において、即座に正確なデータを手に入れることが難しい場面で、方針や戦略を立てる際に有用です。新規事業の立ち上げや市場調査、リスク評価などで活用されます。

論理的思考の訓練:フェルミ推定は論理的思考力を鍛えるツールとしても優れています。
与えられた情報を論理的に整理し、仮説を立て、問題を構造化して解決に向けて進むプロセスは、論理思考の訓練になります。この力は問題解決や意思決定の幅を広げ、より効果的な判断を可能にします。

企業がフェルミ推定を求める理由

では、なぜ企業がフェルミ推定を求めるのか、その理由は効率的な意思決定とリソースの最適活用を図るためです。フェルミ推定は、情報の不確かさが高い状況でも近似的な答えを導く手法であり、ビジネス戦略の策定やプロジェクトの進行状況の予測に重宝します。

このスキルを持つ従業員は、迅速かつ的確な判断を下し、会社全体の効率を高めます。数値的な根拠を持って提案や意見を述べることができるため、組織内での影響力も高まることでしょう。 フェルミ推定は企業にとって、不確かな情報環境においても成功に近づくための強力なツールといえます。

フェルミ推定のやり方

では実際に、フェルミ推定の手順についてみていきましょう。
具体的な手法を解説するため、今回は新しいレストランの開店を例に取り上げます。このプロセスを通じて、どのようにして問題を解決し、的確な推定を行うかを説明します。

計量の対象を明確にする

フェルミ推定を使う際、まず計量の対象を明確にします。
これは、問題や課題に関連した要因やパラメータを特定するための重要なプロセスとなります。 ある程度の需要を見積もるためには、顧客の数、購買頻度、競合他社の影響などが計量対象となります。

具体例

まずは、最初に開店するレストランの規模や特徴を明確にしましょう。
主に座席数、営業時間、平均的な客単価などが重要な要素として挙げられます。 例えば、小規模な店舗ならば20席程度、中規模な店舗なら50席程度と推定してみましょう。
次に、その地域の食事需要を考えます。大学が近くにある場合、昼時には多くの学生が来店するかもしれません。また、夜には近隣の住民が利用する場合も考えられます。

戦略を策定する

計量の対象が明確になったら、具体的な戦略を考えます。
戦略を具体的に立てる際には、計量結果に基づく仮説を立て、その仮説を検証する方法を考えます。具体的な戦略を策定することで、ビジネスの効率性や競争力を向上させる手助けになります。

具体例

店舗の規模が定まったあとは、どのような料理を提供するか、ターゲットとする顧客層は誰か、などを明確にしましょう。
例えば、ファストフードスタイルで若者をターゲットにした場合、平均的な客単価は1,000円程度と推定します。

論点を構造化する

計量結果を活用するためには、論点を構造化することが重要です。
これは、問題解決のために必要な情報や手順を整理し、論理的に組み立てる作業となります。
具体的には、論点を明確にし、それに関連する項目を洗い出します。 それらの関連性や優先度を考慮しながら情報を整理していきましょう。

具体例

新レストランの開店において、初月の集客戦略を論点として考えた場合、SNS広告や地域のイベント参加などの施策を検討します。1日あたりの来店者数や効果的な宣伝手法を推測し、初月の売上を推定できます。

数値の代入と計算を実行する

論点を構造化したら、次は数値の代入と計算をします。計測したデータや情報を具体的な数値に置き換え、概算の数字を計算しましょう。正確な数字がなくても、近似的な値を使って問題を解決することが可能です。

具体例

例えば、1日の来店者数を100人、平均的な客単価を1,000円と推定します。これにより、1日あたりの売上は100,000円。初月の営業日数が30日だった場合、初月の売上は約3,000,000円となります。

フェルミ推定のやり方のコツ

フェルミ推定をより効果的に活用するためには、いくつかのコツがあります。これらのコツを実践することで、より精度の高い推定を行うことができます。 では、そのポイントを詳しく紹介していきます。

論理性を重視する

フェルミ推定において論理性は重要な要素です。論理的な思考に基づいて仮定や前提条件を設定し、それらを元に計算し推定結果を得ます。論理的な流れで問題を解析することによって、正確な近似値にたどり着きます。
また、論理性を重視することで、不必要な情報や要素を排除し、推定の精度を高め、より効率的に問題を解決できます。

このように、論理性を重視することで、フェルミ推定の有用性を最大限に引き出します。

MECEを意識する

次に、フェルミ推定において重要なのはMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)の原則を意識することです。

日本語では「相互に排他的で、共に網羅的」と訳されますが、「漏れなくダブりなく」と言われることもあります。 顧客の属性や購買動機をMECEに整理することで、情報の漏れや重複を防ぎ、的確な推定につながります。MECEの原則は、論点を明確にし、必要な情報を把握するステップを効果的に進めます。

数値を下調べする

事前に利用可能な情報やデータを活用しましょう。
これによって、推定の際により正確な数値を利用できます。数値を下調べすることで、推定結果の精度が向上し、より信頼性の高い近似値を得られます。

例えば、新レストランの開店においては、同業他社の売上データや顧客の嗜好に関する情報を収集することで、客単価や来客数の推定に役立ちます。 情報収集は、フェルミ推定をするうえで欠かせないステップです。適切な情報を活用することで、より的確な推定結果が得られます。

完璧は目指さない

フェルミ推定をするうえで肝要なのは、完璧を求めないことです。
情報が不確かであったり、限られている場合であっても、論理的思考と経験則を活かして近似的な答えを見つけることを意識しましょう。

ときとして完璧な情報を得ることは難しい場合もあります。 必要なのは現状で得られる最も妥当な答えです。
完璧さを求めるのではなく、妥当性を追求する姿勢を大切にしましょう。

フェルミ推定の利用例

フェルミ推定の利用例を挙げると、具体的なビジネスシーンでの活用方法がより理解しやすくなります。

以下はあくまで一例ですので、必要な際にはご自身のビジネスモデルに即した例に置き換えてみてください。

大きな長さから小さな長さを取得

フェルミ推定を使って大きな長さから小さな長さを取得する方法を考えてみましょう。

【例題】紙束のうち1枚の紙の厚さは何㎜?

まずは、対象となる大きな長さを小さく分割することから始めます。
何枚にも重なった紙束のうち「一枚の紙の厚さ」を知るために紙束の厚さを見積もります。

次に、束になった紙のページ数を推定しましょう。

最後に、これらの推定値を割って、大きな対象物から小さな対象物の長さを求めます。
紙束の厚さ÷ページ数が、推定する一枚の紙の厚さとなります。

売上を推定

フェルミ推定を使って売上を求めるには「要素を分解する」ことがポイントです。
顧客単価、来客数、商品単価といったようにそれぞれの要素を洗い出し、計算することで特定の範囲の売上を求めることができます。

【例題】ラーメン店の1日の売上は?

ラーメン店の一日の売上を推定するには、客単価と一日の来客数で算出します。
例えば、20席の人気ラーメン店では、小、中、大の客単価をそれぞれ650円、750円、850円とし、人口や所得から、それぞれの客の割合を3:3:4と推定します。

次に営業時間帯ごとに席数と回転率を考慮し、一日の来客数を算出します。一日の来客数は約900人としましょう。

これらの要素を入れて計算すると、ラーメン店の一日の売上は、650円×(900人×0.3)+750円×(900人×0.3)+850円×(900人×0.4)=約68万4,000円となります。

プロダクトの年間売上

店舗の売上以外にも、フェルミ推定を駆使すれば、商品の年間売上を見積もることが可能です。

今回も、販売単価、年間販売数、1世帯あたりの使用数などの要素をもとに算出してみましょう。

【例題】自宅で使用する電球の年間売り上げは?

自宅で使用される電球の年間売上を推定するには、販売単価と年間販売数で算出します。
すべての家庭用電球を対象とし、年間販売数は世帯数と1世帯あたりの年間販売数から導き出します。

日本の人口が1.2億人で、1世帯あたりの人数は2.5人、1世帯あたりの電球数は20個、年間買い替え回数は0.5回とした場合、「販売単価×年間販売数=家庭用電球の年間売上」の式に代入をして計算すると、家庭用電球の年間売上は約2,500億円と推定されます。

特定のモノの数

特定のモノの数を算出する場合にも、フェルミ推定を活用できます。

【例題】1日に画面が破損するスマートフォンの数は?

1日に画面が破損するスマートフォンの数を推定してみましょう。

まず、1つのスマートフォンの寿命や平均的な破損率を推定します。
次に、スマートフォンの販売台数や利用者数を基に、1日に何台のスマートフォンが破損するかを推測します。 1万台のスマートフォンが利用されており、その中で1%が1日に破損したと仮定すると、1日に100台のスマートフォンが破損することになります。

このように、具体的な数値がなくてもフェルミ推定を使えば特定のモノの数を推測できます。

フェルミ推定の注意点

フェルミ推定は、情報不足の状況でも問題解決に役立つ魅力的な手法ですが、一方で注意が必要な点もあります。

以下に、フェルミ推定を活用する際の注意点をご紹介します。

正確性を求めすぎない

フェルミ推定の際には、完璧な正確さを求めすぎないことが重要です。
情報が限られている場合や不確かな場合においても、あくまで近似的な答えを見つけることが目的となりますので、過度な正確性の追求は、問題解決の効率を損なう可能性があります。

代わりに、妥当な近似値を求める姿勢が、フェルミ推定の力を最大限に引き出す鍵となることでしょう。

要素分解では目的がブレやすい

要素を細かく分解すればするほど、目的がぼやけてしまうのはフェルミ推定をする際に起こりがちな状況です。

細部にこだわるあまり、本来の目的を見失わないように、全体の目的を念頭に置きつつ、必要な要素を選別することが重要です。
要素分解をする際は、常に最終的な目的を意識しましょう。

勘で数値を入れると精度が下がる

フェルミ推定では、数値を推定する際に勘や経験則を活用しますが、過度に依存すると精度が低下する恐れがあります。
自身の勘や経験に頼るのも大切ですが、それらはあくまで補助的な要素であり、正確な推定には論理的な思考と根拠をもとに数値を推定することが重要です。

常識の範囲内の回答か再確認が必要

フェルミ推定で得られた回答が、常識の範囲内に収まるかを確認する必要があります。場合によっては、推定結果が非現実的なものだったケースもありますので、その際は、再度計算や論理のチェックを行い、妥当性を確認しましょう。

常識的な範囲内に収めることで、正しい推定ができます。

まとめ

フェルミ推定は、情報不足の状況でも役立つ強力なツールです。
経験則正確な数値よりも、妥当な近似値を求めます。そのためには論理的思考と知識(経験則)が必要になります。

一方で、過度な正確性の追求や要素分解によって目的を見失うこともあるので注意が必要です。
また、自身の勘に頼りすぎず、常識の範囲内に収まるかどうか再確認する姿勢を心がけましょう。

フェルミ推定はビジネスシーンでの意思決定や問題解決に幅広く活用できる手法であり、正しい使い方を身につければ、効果的な意思決定の一助となります。

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